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企 業 財 務 記 事 ウ ォ ッ チ ャ ー 2004年1月


2004年1月30日 日経  監査法人強まる行政の監督 銀行監査厳格化へ圧力

記事要旨:
 金融庁は企業決算のお目付役である監査法人への監督を強化する。同庁が4月に設置する「 公認会計士・監査審査会 」は、監査法人を検査して行政処分を勧告できる権限を持つ。
 監査審査会は、監査法人への懲戒処分などを審査している公認会計士審査会を母体に設立するが、権限は大きくなる。たとえば、会計士協会は品質管理レビューの結果を審査会に報告する義務を負う。審査会は報告を吟味し、必要があれば協会に立ち入り検査に入る。個々の監査法人、監査先の企業を検査することもできる。
 審査会の陣容も、竹中平蔵経済財政・金融担当相の主導で整いつつある。来年度予算案で、審査会を支える 事務局員40人 を確保した。
 29日の自民党金融部会では複数の議員から、足利銀の破綻につながった税効果資本の大幅減額に疑問の声が上がった。審査会はこうした意見を踏まえ、 税効果資本を監査の重点テーマにするとみられる

コメント:
 会計士に対する監督が厳しくなるのは、わが国の国内事情によるというよりは、米国で企業改革法が成立し、米国の監督当局が米国で公開している海外企業の監査人を直接監督しようという動きがあるからでしょう。米国がいっているのは、各国の当局が監査人に対する監督を強化すれば、それに依存し直接的な監督は差し控えるということなので、わが国の金融庁も締め付けを厳しくせざるを得ません。
 といっても、会計や監査の分野は、白黒がはっきりする事項ばかりではありません。あまり形式的なルールをふりかざして、それへの遵守だけを求めるのであれば、かえってディスクロージャーは後退し、監査も形式的・マニュアル主義的になってしまいます。監査実務については会計士協会のレビューに任せ、当局は、粉飾や不十分な開示が疑われる事例を個別に厳しくチェックし、そのなかで監査人の責任を問うようにした方が監督の効果が上がると思います。
 記事によれば、税効果会計を重点テーマにするということですが、それこそ、政治や行政が民間企業の監査に介入することになるのではないでしょうか。金融庁は金融機関を直接監督する権限があり義務があるのですから、繰延税金資産がおかしいと考えるのなら、よく調べたうえで、直接是正させればよいのです。もっとも判断を要する箇所だけ監査人に責任を押しつけることは、責任逃れ以外の何ものでもありません。今の状況だと、監査法人は繰延税金資産を厳しく査定したか、甘く査定したかにかかわらず、金融機関が破綻すれば責任を押しつけられそうです。、

2004年1月28日 Yomiuri On Line  恐喝被害の長谷工、水増し発注で資金調達

記事要旨:
 マンション建設会社「長谷工コーポレーション」がNPO法人「消費者問題研究会」幹部から3000万円を脅し取られていた事件で、同研究会に渡していた資金のうち2500万円は、長谷工が工事の水増し発注によって捻出した裏金だったことが28日、警視庁の調べでわかった。
 長谷工は、下請け会社に工事を水増し発注する方法で裏金を捻出したうえで、(営業妨害禁止の)仮処分決定が出た後の2002年10月から11月にかけて、この下請け会社を通じ3回に分けて、計2500万円を同研究会の口座に振り込み送金していた。さらに、同年8月には、藤川被告が代表を務める産業廃棄物処理会社との間で、 環境調査業務を発注したとの架空契約を交わし、2回に分けて計500万円を藤川被告の会社の口座に振り込んでいた。

コメント:
 同じ日の日経夕刊によれば「建設関連業界は、地域対策などの名目で建設現場や営業の担当者が多額の出費を決済できる ケースも多く」、「長谷工のある総務担当幹部は「3000万円は現場の決済で出費できる範囲」」といっているそうです。そういう事情はわからないではありませんが、そうした不正支出を防止するような内部統制の仕組みを構築する責任は会社にあります。日本の有価証券報告書でも、米国の制度をまねて、開示の適正性を経営者が確認する確認書をつけるようになっています(今のところ任意ですが)。内部統制が不備な場合は、不正支出は現場がやったのであって本社は知らなかったといって言い訳することは、今後だんだん、難しくなるでしょう。

2004年1月28日 日経夕刊  粉飾事件、2被告、詐欺は無罪 「山崎製パン側に不自然さ」

記事要旨:
 コンビニエンスストア経営会社「タイムリー」の元役員らが決算書類を粉飾 し、山崎製パンに第三者割当増資を持ちかけて資金を不正に引き出したとされる事件で、判決公判が28日、名古屋地裁であった。
 石川容示裁判長はタイムリーが1998年2月期に粉飾決算をしたと認定。そのうえで「 店舗数にほとんど変化がない状況で売掛金が約10億円増加 し、2億円の経常利益を確保したとする決算内容を山崎側が信じたというのは不自然」と指摘。「増資引き受けの際、 新株発行価格が適正なものと信じたとする山崎側の供述も信用することは困難」と述べ、詐欺罪について無罪とした。

コメント:
 判決が妥当なものかどうかはともかく、考えさせられる判決です。
 まず、粉飾決算であるということを認定しながら、詐欺ではないとしている点については、中小企業の決算の実態ということからすると、しかたがないのでしょう。もし、粉飾決算書を取引先に見せることが詐欺にあたるとすると、減価償却をやっていない決算書を金融機関に提出して融資を受けることも詐欺になってしまいます。
 したがって、そういう中小企業を相手にして多額の取引を行う場合、それなりの注意を払う必要があります。監査でも最低限分析的手続はやるべきとされていますが、 億単位の資金を投入するのであれば、決算書は参考程度にして、実態をよく調べるしかありません。
 この事件では、たしか会計士も絡んでいたと思いますが、どうなったのでしょうか。

2004年1月28日 日経  会計基準委 企業の役員賞与 費用計上を決議

記事要旨:
 企業会計基準委員会は27日、企業の役員賞与を費用計上 する会計処理を定めた公開草案を決議した。当面は従来の利益処分による方法も容認する。

コメント:
 役員賞与を費用計上するという方向は当然ですが、当面、利益処分方式も認めるのでは、会社間の比較可能性は全くありません。当面とはどのくらいの期間なのでしょうか。(商法の解釈上の問題があって当面両方認めることにしたようですが・・・)

2004年1月24日 日経  金融庁、UFJ調査へ 貸出先査定内部資料を精査

記事要旨:
 金融庁はUFJ銀行に対して 、月内にも貸出先企業の査定を巡る異例の調査を始める。貸出先の財務内容が 金融庁に示していた正式資料より悪いことを示す資料が大量に見つかったためだ。
 複数の関係者によると、金融庁が内部の資料を入手したのは昨年秋。特別検査の最中だった。UFJ内部からの情報提供を受けて、検査官が他の書類の保管場所とは別の部屋に入って発見した。
 一連の資料は融資実行にあたってのりん議書などを含む。銀行側がそれまで検査官に示していた正式の資料に比べて、取引先の収益・資産の現状や収益見通しが劣る例が目立つという。

コメント:
 会計監査では、監査報告書を渡す前に監査先の経営者から「経営者確認書」を入手しますが、この経営者確認書には、必要な資料すべてを監査人に提供したということも記載してもらいます。この記載の意味は、監査人と会社の信頼関係に基づき、会社が資料を隠さず監査人に見せることが、会計監査の前提であるということです。UFJ銀行が銀行ぐるみで 記事のようなことを本当にやっていたのなら、(監査人にもおそらく隠していたでしょうから)、監査人は契約の打ち切りを考えるべきです。そういう信頼できない相手はリスクが高くまともな監査ができないからです。
 記事に書かれているとおり意図的に資料を隠していたとしたら、この銀行は、大和銀行ニューヨーク支店損失事件で当局への報告を遅らせた罪で巨額の罰金が科せられたことや、米国のアンダーセンがエンロンの監査の関係書類をシュレッダーしたことで(粉飾に加担していたかどうかもはっきりしていないのに)、実質的に消滅してしまったことなどの教訓が全く生かされていません。 日本の金融庁や監査法人を見くびっていたのでしょう。
(融資先の収益見込みなど予測に関する事項であれば、銀行内に複数の見方があって、そのうちの一つを最終的に採用して資産査定を行ったいうこともあるかもしれませんが、事実に関する資料を隠していたとしたら、弁解できないと思われます。)

参考:UFJホールディングスのサイトより

2004年1月23日 日経  電話加入権料、総務省が廃止構想 目標は2006年4月

記事要旨:
 固定電話の使用開始時にNTT側に支払う加入権 料を総務省が廃止する構想を打ち出し、企業や個人が揺れている。
 加入権廃止の場合、企業は損失計上を迫られる公算が大きい。会計上、加入権は無形固定資産に分類される。2006年3月期に導入される固定資産の減損会計の対象となるためだ。
 すでに損失処理に踏み切った企業もある。ヤマト運輸は昨年、本体の情報通信事業を子会社に統合した際、加入権の一部を流通価格で時価評価し2003年9月中間期に評価損を計上した。損失額は不明だが、対象となった加入権の簿価は1億円前後とみられる。
 NTTは加入権が無価値になっても収益への影響はない と説明する。設備設置負担金をもとに敷設した電話回線などの設備を固定資産として計上していないからだ。加入者から受け取った資金で回線や交換機などの固定資産を取得した場合、その固定資産は加入者の支払分だけ減額できる。

コメント:
 電話加入権の廃止で企業に損失が出るのは、減損会計が導入されるからではなく、廃止の時点で電話加入権の価値が全くなくなってしまうからです。価値がなくなったものを資産に計上し続けることはできないので、遅くとも廃止の時点では損失を計上しなければなりません。
 問題は、廃止の時点まではどのような会計処理をするかです。
 仮に、電話加入権を買ったときに2006年4月には価値がなくなるということがわかっていれば、2006年4月時点で簿価がゼロになるように減価償却していたはずです。そう考えると、臨時償却的に、過年度に償却していたはずの金額を一時に落としてしまうという処理が考えられます(残りの金額は2006年4月まで均等償却する)。ただ、それも面倒な処理になるので、現時点で備忘価額(1円)まで評価減する方法もあるでしょう(やや保守的すぎますが)。
 企業にとっては、加入権廃止によって損失が生じますが、それが税務上損金になれば、税金分だけは戻ってきます。資金繰り的にはプラスになります(会社ごとにみれば大した金額ではないでしょうが・・・)。
 NTTにとっては、加入権の廃止は、(加入権料も含んだ)固定電話料金の実質的値下げになります。従来は(たぶん)加入権料を固定資産の取得原価から差し引く処理(圧縮処理)をしていたのだと思いますが、その場合は、固定資産の簿価が小さくなった分だけ減価償却費が減って、利益がそれだけ多く計上されていたわけです。それがなくなると、利益面ではマイナスになるはずです。ただし、固定電話の新規加入は激減しているので、さほどの影響はないのでしょう。加入権料を返さないのはおかしいという考え方もあるようですが、NTTからすれば、預り金のような金銭債務でもなく、単に設備投資金額の一部を新規加入者に負担させていただけという扱い(会計上も法律上も)なので、 受け入れられないでしょう。

2004年1月20日 日経金融  国際会計基準対象外をPR 起債呼び込み証取間で加熱

記事要旨:
 欧州連合(EU)で国際会計基準が導入される2005年 以降をにらみ、基準適用を避けたい起債企業を呼び込む市場間競争が熱を帯び始めた。英ロンドン証券取引所は現在は同証取のメーン市場に上場するEU域外企業の債券をAIMに移し、発行企業が国際会計基準を使わなくても済むようにする。” 会計基準のオフショア市場”をつくる発想といえる。一方、スイス証券取引所は有力銀行と債券の値付けで相次ぎ提携、流通市場の厚みと「非EU」の強みを武器に起債シェアを奪回する構えだ。

コメント:
 会計基準のオフショア市場という考え方はなかなかおもしろいと思います。正規の市場では、国際会計基準を強制して一定の水準を保ち、オフショア市場では会計基準の選択を自由にして門戸を広げるということで、ヨーロッパで資金調達する日本企業にとってもプラスでしょう。
 ただし、中国、ロシア、東南アジア諸国などが、国際会計基準を使うようになると、オフショア市場は日本企業しか使わない市場になってしまいます(米国、カナダ、オーストラリアなどの会計基準は国際会計基準と同等ということのようです)。それもさみしいものがあります。
 ところで、日本でも会計基準のオフショア市場という考えを一部取り入れてもよいのではないでしょうか。例えば、四半期決算は、東証だけでなく地方の取引所も追随して強制していますが、年度と中間だけきちんとやっていれば四半期決算は不要という取引所があってもよいはずです。

2004年1月18日 日経  企業年金昨年4−12月 利回り12%に改善 通期も4年ぶりにプラス

記事要旨:
 企業年金の運用悪化に歯止めがかかってきた。格付投資情報センターの調べによると、株式相場の上昇を追い風に 2003年4−12月は12.4%の運用利回りを確保した。
 企業年金の多くは年間3−4%程度の利回りを想定している。運用成績が想定を下回り、将来の支払に必要な額をまかなえないおそれが生じた場合は、 一定期間内に企業側が補てんする必要に迫られる。ここ数年はこうした負担が業績を圧迫してきたが、 今年度は大幅に負担が軽減される
 旭化成は年金の運用成績を翌年度決算に一括して反映 させている。日経平均株価が今年3月末まで1万円前後で推移すれば「2005年3月期は大幅な増益要因となる」(同社幹部)という。

コメント:
  数理計算上の差異は通常遅延認識 されるので、今年度、急に年金費用の負担が軽減することはありませんが、過年度に生じた数理計算上の差異の償却を、今後、いくらか相殺する効果はあるでしょう(また、通常、数理計算上の差異は翌年度から償却なので、今年度の損益には影響しないのでは・・・)。
 旭化成のように、数理計算上の差異を一挙に償却することを、日経などのマスコミは健全な処理であるといってきましたが、実際運用収益率の方が期待運用収益率を上回る場合には、一挙に利益が計上される(正確には退職給付費用が一挙に減る)ので、必ずしも保守的な処理とはいえません。毎年の年金運用成績により、業績が大きく動くことになり、外部になかなか説明しづらい決算になる可能性があります。
 なお、記事では「運用成績が想定を下回り、将来の支払に必要な額をまかなえないおそれが生じた場合は、 一定期間内に企業側が補てんする必要に迫られる」とされていますが、退職給付会計は発生主義の会計処理なので、補てんのため年金資産に拠出したとしても、引当金のマイナスとなるだけで、損益計算書上、費用や損失が生じるわけではなく、損益面での負担は生じません(資金的な負担は当然ありますが)。

2004年1月16日 日経夕刊  シナジー幻想を超えて  (十字路)

記事要旨:
 シナジー(相乗効果)追求は重要な経営戦略の一つであるが、そこには危険な罠が待ちかまえている。
 シナジーにはどのような罠が隠されているのだろうか。第一には、もたれ合いの罠である。シナジーを追求するうちに、 単独では存続できない事業も抱えこむことになる。いつしか 企業全体がもたれ合い事業の集合体となり、将棋倒しの危険にさらされる ことになる。

コメント:
 減損会計の論点の一つとして資産のグルーピングがありますが、経済界からは、できるだけ大きな単位のグルーピングを認めるべきという意見もあったようです。しかし、大きな単位でグルーピングするということは、問題のある固定資産を特定し、処理することができない可能性を招きます。不良資産を抱えたまま、企業全体がダメになっていくことにもつながります。

2004年1月16日 朝日  金融庁検査で自己資本比率低下 「他行でもあり得る」 足利銀質疑で会計士協会会長

記事要旨:
 足利銀行の破綻をめぐる参考人質疑が15日、参院財政金融委員会で開かれた。参考人として出席した日本公認会計士協会の奥山章雄会長は「 (金融庁検査の結果)自己資本比率が数%低下することは、どこの銀行にもあり得る」と延べ、足利銀のケースが特別ではないという認識を明らかにした。

コメント:
 貸倒引当金や、繰延税金資産の回収可能性というのは、所詮見積でしかなく、異なる検査(あるいは監査)主体が検査なり監査すれば、ある程度異なる結果が出るのは当然です。税務の基準のように決まった場合にしか引当金を計上しない、あるいは、一律の引当率を決めてしまうということにすれば、だれが検査・監査しようと同じ結果になりますが、それでは、貸倒不能額をできるだけ実態に合わせて見積もって引き当てするという会計基準の目的が達成できなくなってしまいます。財務諸表の読者に、貸倒引当金や繰延税金資産の回収可能性の判断は、ブレが生じうるものだということを理解してもらうしかないと思います(もちろん、銀行や監査人が意図的に甘い査定をしたのではないことが前提ですが・・・)。

2004年1月15日 朝日  足利銀問題 監査法人、責任を否定

記事要旨:
 足利銀行の破綻を巡る参考人質疑が14日、衆院財務金融委員会で行われ、中央青山監査法人の上野紘志理事長が監査の経緯を語った。
 上野氏は、決算確定前に行う監査に対し、金融庁検査は事後チェックで目的が違う と延べ、結果がかけ離れた理由については「金融庁が、監査法人とは異なる 信用秩序確保、資産の健全性といった見地から判断 した結果」と述べた。
 03年3月期決算で足利銀の持ち株会社が優先株の配当を出したことの適法性 に関しても、「適法」との見解を示した。
 一方、中央青山が、足利銀の03年3月期決算で、1387億円認めた繰り延べ税金資産を、中間期は全額否認したことについて、足利銀の日向野・元頭取は「約1200億円計上する方向で打ち合わせていたのに、突然、全額否認された」と、監査法人の対応を避難した。
 これに対し上野氏は、「税金資産の前提となる課税所得の見通しが狂った場合は、税金資産を減らすことを約束する経営者確認書 の提出を受けていた」と反論。全額否認は「将来の利益計画、企業の継続性に疑問が生じたため」と語り、銀行側の主張とは最後まで平行線をたどった。

コメント:
 中央青山の理事長が、会計監査と金融庁の検査は、目的や判断基準が違うといっているのは、納得できない発言です。監査と検査では、最終的な目的はたしかに違いますが、資産の査定という点では、会計基準のレベルでも、実務のレベルでも、基本的には同じ判断基準によっているはずです。単に、銀行や監査人が意図的に甘い査定をしたのではない限り(もしそうであれば粉飾決算です)、見積りの誤差の範囲だと考えればよいと思います。
 ただ、どの銀行も「体力の範囲内でできるだけ償却をした」といった会計基準無視の発言(体力があろうとなかろうと会計基準で定められた引当はすべきなのではないか)を繰り返してきたため、厳しく査定した金融庁の検査の方が正しくて、銀行による資産査定やそれをチェックした監査法人による監査は、甘い判断をしているとみられるのもしょうがないのかもしれません。
 配当の適法性についても問題となったようですが、そもそも、繰延税金資産も配当可能利益を構成するという、商法の規定自体を見直す必要があると思われます。足利銀の場合は、持ち株会社(足銀FG)なので、連結ベースで配当可能利益を算出し、その際、繰り延べ税金資産は、配当可能利益から除外すべきだと思います。実際に税効果が実現して、税金の支払額が少なくて済んだ時点で、配当できれば十分です。商法改正で資本準備金まで配当できるようになったのですから、少しぐらい厳しくする方がバランスがとれます。

2004年1月14日 日経  広がる「持たない経営」 減損会計に備え資産効率化 証券化や社屋売却

記事要旨:
 企業の間で資産の売却や証券化による「持たない経営」が加速している。
 経営再建中のミサワホームホールディングスは約3500件の特許権を裏付けにした証券化 で資金調達を検討している。同社は開発した住宅用換気システムや新素材建材に関する特許権について第三者に価値を依頼して算定した実績がある。
 資産の証券化は資産のみを担保にした資金調達の手法。株式や債券と違って企業の信用力や収益力に左右されにくく、 キャッシュ・フローを生み出す資産があれば、中小企業や格付けの低い企業でも低コストの資金を調達できる。

2004年1月11日 朝日 青色LED特許の効果 2650億円対−15億円

記事要旨:
 青色発光ダイオード(LED)の発明をめぐって、中村修二・米カルフォルニア大学教授が、勤務先だった日亜化学工業に正当な対価を求めている訴訟で、 特許が同社にもたらした収益について双方がそれぞれ大手監査法人に依頼した鑑定結果が、 2650億円とマイナス15億円 と大幅に食い違っていることがわかった。
 中村氏が鑑定を依頼した監査法人トーマツ は日亜の青色LED事業の売上高を、米国系調査会社の市場予測などを基に特許が失効する2010年10月まで試算した。そこから営業費用や事業継続に必要なコストを差し引いた額を特許がもたらした「超過収益」とし、最大2650億円になるとはじき出した。
 一方、日亜側の新日本監査法人は、依頼時に商法上確定していた01年度までの青色LED事業による当期利益を積算。そこから開発コストなどを差し引き、15億円の損失になるとしている。

コメント:
 特許権もたしかにキャッシュ・フロー獲得に役立つ資産であることには違いはないと思いますが、維持管理さえしていれば家賃収入がある程度確実に見込まれる賃貸不動産などとちがって、保有しているだけで自動的にキャッシュ・フローを 稼いでくれる資産ではありません。特許権を保有している企業に、それを活用して事業活動に生かせるだけの能力があるかによっても、その価値は違ってくると思われます。青色発光ダイオードの訴訟では、2つの大監査法人がまったくかけはなれた金額で評価しているようですが、企業が稼ぐキャッシュ・フローのうち特許権が貢献した部分を切り出すのはかなり難しいのではないかと思います。
 そういう意味で、ミサワホームがやろうとしている特許権の証券化では、どのように特許権を評価しているのか気になります。証券化したうえで、ミサワホームがその特許権の使用料を支払うというスキームであれば、使用料の設定方法次第で、いくらでも特許権の価値を動かせる余地があるのではないか、もしそうであれば、本当にオフバランスを認めてよいのかということも気になります。

2004年1月8日 日経  減損会計 中小企業に適用せず 貸し渋り回避狙う

記事要旨:
 政府は企業の保有する土地など固定資産価格が大幅に下落した場合に損失を計上する 減損会計 について、資本金1億円以下の 中小企業には義務付けない 方針を決めた。
 中小企業庁と金融庁は中小企業向け金融が円滑に進むようにする一環で、中小企業会計のあり方の検討を進めてきた。中小企業に減損会計を適用すれば、固定資産価値の下落で債務超過に陥る企業が相次ぐ恐れがあるとの認識で一致。金融機関が融資回収や貸し渋りを急がないよう、中小企業には適用しない方針を明示し、中小企業や金融機関の不安を取り除く必要があると判断した。
 中小企業が減損会計の適用から外れれば、金融機関は融資に取り組みやすくなる。不動産価値の下落で中小企業の資産が劣化しても直ちには債務者区分を下げずに済む。 融資が不良債権にならない結果、新規の貸し出しなどがしやすくなる。

コメント:
 記事を読む限り、中小企業の会計と、中小企業に融資している金融機関の会計(あるいは融資姿勢)という問題が一緒に議論されていておかしなことになっているようです。
 まず、中小企業の会計という点では、もともと、中小企業は監査の対象にもなっておらず、減価償却や棚卸資産の強制評価減すらきちんと処理されているのかあやしいというのが現状であり、政府の方で減損会計を適用しなくてもよいとわざわざいわなくても、すすんで適用しようという会社はわずかしかないはずです。つまり、中小企業(公開企業の関係会社を除く)の会計にとっては、実質的にほとんど意味のない決定です。
 一方、金融機関の方は、会計監査や金融検査の対象であり、当然、貸出金の回収不能額について 貸倒引当金を適正に計上する義務 があります。融資先の企業が、 減損会計を適用しているかどうかは、その企業の資金繰りには全く影響を与えない ので、減損会計を適用すれば不良債権になるけれども、適用しなければ不良債権にはならないということはありえないはずです。例えば、月20万円の家賃収入を生み出す不動産は、減損会計を適用して帳簿価額が仮に半分になったとしても、家賃収入がそれに応じて10万円に減ることはありません。(非常におおざっぱにいえば)月20万円の家賃収入で融資の返済が条件通り可能だと見積もることができれば正常債権であり、可能でなければ不良債権になるだけの話です。また、 担保評価についていえば、現時点でも 時価 をベースに評価しているはずであり、これも減損会計を適用するかどうかとは全く無関係です。
 もちろん、中小企業の債務者区分が大企業と同じでよいのかという問題はありますが、それは融資を受ける側の会計処理の問題ではなく、融資する側の問題です。融資を受ける側には、できるだけ健全な会計処理を行わせ、金融機関側は決算数値とその他の情報を併せて検討し融資の回収可能性を判断し、適正な貸倒引当金を計上する(あるいは融資実行の判断を行う)というのが筋です。
 減損会計を適用しなければ金融機関は引当金を計上する必要もなく、どんどん貸付が実行される(あるいは貸し渋りが解消する)という考え方は、金融機関が実態に合わない融資先の決算数値にだまされることを前提にしており、ある意味で、日本の金融機関を見下した考え方です。

2004年1月8日 日経  カネボウ 貸付金522億円が取り立て不能に

記事要旨:
 カネボウは7日、子会社の興洋染織の解散 に伴い、 523億円の貸付金が取り立て不能 になるおそれがあると発表した。取り立て不能を見込んで2003年9月中間期までに 構造改善費用として貸倒引当金を計上しており、新たな損失は発生しないとしている。

コメント:
 記事のとおりだとすると、500億円以上の貸付があったということですから、この子会社はカネボウにとって重要な子会社であり、当然、連結の対象となっていなければなりません。連結していれば、貸付金や子会社に対する投資は消去され、子会社の資産・負債が直接連結財務諸表に計上されていたはずです。なぜ、貸倒引当金が生ずるのでしょうか、不思議です(子会社解散により子会社の資産が毀損するのであれば、その中身をきちんと示すべき)。
 最近、構造改善費用といった、中身のよく分からない損失を計上する企業が増えています。注記か何かで内訳を示していればまだよいのですが、カネボウの9月中間期の決算短信を見る限り、何でもつっこんでごみ溜めのように使っているようです。

2004年1月7日 日経  国際会計基準使用可能に 欧州の義務化に対応 来年にも

記事要旨:
 金融庁は2005年にも、日本で上場している企業に 国際会計基準による決算書 を認める方向で検討に入った。
 欧州市場に上場している日本企業は、リコーや三菱商事など55社(米国など他地域の上場企業を除く)。現在は日本基準をそのまま使うことが認められているが、EUが国際会計基準を採用する 2005年以降も日本基準が使えるかどうかは不透明。仮に使えなくなれば、企業は2種類の決算書を作成することになるためコストが増える。
 金融庁は日本企業の負担を和らげるため、欧州での取引が多い企業などを対象に、国際会計基準で作成した決算書を日本市場でも幅広く認めるべきだとの判断に傾いている。月内に企業会計審議会の企画調整部会を再開し、具体案の検討に入る。

コメント:
 米国会計基準については、連結決算だけですが、連結財務諸表規則の雑則により、証券取引法による開示上用いることが認められていますが、たぶん、国際会計基準も同じような扱いになるのでしょう。米国会計基準の場合はSECに登録している企業しか採用が認められていませんが、国際会計基準の場合には適用企業を監督する全世界的な機関はないので、EUの監督当局に登録した場合のみ採用が認められるというかたちになると思われます。
 国際会計基準の強制については、欧州市場に上場している企業が対象になるのでしょうが、株式を上場する会社だけでなく、社債のみ上場する会社まで範囲になると、日本企業にもかなりの影響が予想されます。
 そのうち海外で資金調達するような優良企業は、日本基準ではなく、みな米国基準か国際会計基準を採用するという時代がくるのかもしれません。

2004年1月6日 日経  上場企業の繰り延べ税金資産 9月末25%減少、10兆円割る 監査厳格化が影響

記事要旨:
 日本経済新聞社が全国上場企業の2003年9月中間期の 繰り延べ税金資産 を集計したところ9兆5121億円となり、過去最高だった2003年 3月期末から25%減少 した。利益水準が向上し 課税所得が増加 したことや、 会計監査の厳格化 が影響した。前期末は株式の評価損やリストラ費用など税務上すぐに認められない損失が膨らんでいた。
 集計対象は新興3市場上場、金融除く3月期の全国上場企業1560社。

コメント:
 繰延税金資産が減る要因としては、回収可能性を厳しく評価するようになったことも挙げられるとは思いますが、そのほかにも、有税で評価減した資産を実際に処分したとか、有税のリストラ引当金をリストラ関係の支出により取り崩したといった、 将来減算一時差異の残高自体の減少も考えられます。見出しのとおり、監査厳格化による回収可能性評価厳格化による減少かどうかは、税効果会計に関する財務諸表注記の繰延税金資産から控除された金額を調べる必要があります。どこかの調査機関で調べてほしいものです。

2004年1月6日 日経  森トラストグループ ゴルフ場再生に進出 千葉県で第1号案件

記事要旨:
 森トラストグループは、経営破たんしたゴルフ場の再生事業に参入する。コースの運営会社を新設し、第1弾として経営再建中の東ハトが設立したゴルフ場の営業権を獲得した。数億円程度で買収できる案件が増えており、運営を見直せば十分な投資利回りが得られると判断した。
 東ハトのゴルフ場事業を引き継いだ清算会社から「オークビレッヂゴルフクラブ」(千葉県市原市)を 8億円弱で買収 し、新会社がオークビレッヂゴルフの従業員70人(パート含む)を再雇用した。

コメント:
 減損会計導入により、企業の保有するゴルフ場の減損が必至といわれています。規模、立地条件、ゴルフ場の格など、いろいろな条件は異なるのかもしれませんが、一つのゴルフ場が8億円で買えるというのは、ゴルフ場の減損の影響を占ううえで、一つの参考となる金額かもしれません。

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